別に新海誠の映画が好きなわけではないと散々言ってきたが、なんだかんだ新作公開となると楽しみすぎて夜も6時間しか寝られない日々が続いた。
初日に行く以外の選択肢が無い。
というわけで天気の子を観てきましたが、先ず率直な感想を言うと凄く良かった。
ちなみに世間の評価では、超高評価だった君の名は。に比べて、天気の子は好き嫌い賛否両論が激しいらしく、誰でも楽しめる映画では無いとのことらしい。新海誠本人もそう言っていますね。私もそう思います。
数年前に君の名は。の限界ブログを書いたので、どうせなら今回もそれを考えつつ敢えて天気の子と君の名は。を比較しながら感想を書きたいと思います。
そんなものどうでもいいと思ったら後半だけ読んでください。後半はただのオタク文となっています。本当に言いたい内容は後半です。
君の名は。も楽しみすぎてすぐに観に行きましたが、盛大に期待を裏切られたまらずに(主に批判)ブログを書いたら世間的にはあの大反響でした。本当に通ぶるつもりなんて1ミリも無く、君の名は。はただ純粋にどこがいいのかわからなかったんですよ。
というよりも、アニメ映画の一つに過ぎないだけであったら特に何も思わなかったのだろうけど、社会現象にもなるレベルの爆発的ヒットでポストジブリとまで呼ばれていたことに対する違和感が凄かった、というところにずっとモヤモヤしていました。
しかし
しかしだな
君の名は。の次に出した作品がこれとは恐れ入る
まず天気の子の何が良かったのかと言うと、映像と音楽と演出とぼんやりとした雰囲気とセカイ系ならではの無力感と無敵感。俺たちは雰囲気でアニメを観ている。
映像はもう言うに及ばず。新海誠映画の都会の描写は本当に綺麗。あと雨ですね、ほぼずっと雨が降っている映画なので雨の描写が非常に特徴的ですが、その描写がいちいち丁寧で良い。言の葉の庭の雨とは少し違うタイプだったように思います。
音楽。野田洋次郎は神か?
挿入歌もBGMも文句の付け様が無くて、個人的に音楽に関しては新海誠作品史上最高だったと思います。
特にグランドエスケープと大丈夫。男の子が女の子を大袈裟な演出で助けに行きそこで壮大な挿入歌が流れる、っていうベッタベタな展開が大好きなのでグランドエスケープのシーン本当に最高過ぎました。
もう何あれ。空から落ちながら手を繋ぐって良くある演出だけど最高だよねやっぱり。モーニンググローリーでありバレエ・メカニックじゃん(エウレカのオタク)。
あと単純にグランドエスケープが良すぎる。もうサントラ買って200万回聴いた。歌詞がおかしい。野田洋次郎は全てわかった上であの歌詞を書いているので本当に化物。
大丈夫が流れるシーンはストーリー的にはもう意味わからんし無理やり過ぎなんですが、それでも展開と演出と曲の良さにやられました。歌詞がもうね。若いっていいね。
演出。さっきのグランドエスケープもそうですが割と大袈裟な演出が多かった気がする。花火前のお祈りのシーンとか鳥肌立ちました。僕は大袈裟な演出が好きなのでとても良かった。空を飛ぶってシーンが二回出てくるんですけど、やっぱ空と少年少女って最高じゃん(脳死)。
ぼんやりとした雰囲気。これちょっと大事だと思うので君の名は。と比較しながら喋ります。
実は少し前に、天気の子は君の名は。に比べると退屈で違和感を覚える、という記事を読みなるほどないいこと書いてあると思ったことがありました。
君の名は。は大ヒットしたわけですが、その理由の一つに「観やすさ」があったと思います。分かり易い、展開が早くテンポが良い、シーンが良く変わるので飽きない、更にハッピーエンドでそこにRADWIMPSの歌が合わさればもう最強に観やすいアニメ映画でしょう。好き嫌いは別として退屈と思うことは無い筈です。
だが天気の子はというと、なんかよくわからない、全体的にゆったりしている、シーンの移り変わりは少ない、更に含みを持たせた終わり方でありハッピーエンドとは程遠い。全体的にぼんやりふんわりしている。劇中でずっと雨が降っていることもこのぼんやりした雰囲気に拍車をかけていますよね。
数年前にも書いたのですが、君の名は。は設定やストーリーははっきり言って破綻しています。しかしそれを感じさせない、というか考えさせないスピード感と疾走感と演出があり気にするようなところではないと思うことが出来た(良く考えてみると本当にアンバランスで奇妙なとこだらけなんですよ君の名は。は)。
しかし天気の子はというと、ストーリー自体は超単調な上にスピード感や疾走感というものも終盤ぐらいしか無いので、どうしてもそういった話自体や設定を意識するようになってしまう。誤魔化しが効かない。
本当にシナリオ自体は単純なので破綻自体は君の名は。よりは少ないと思っているんですけどね。
結果違和感を覚えるようになり、退屈だと思うようになる。
ただ私はこれを悪いと言っているわけではないです。
元より私が新海誠作品で好きなところはこういうぼんやりとした雰囲気でした。だから面白い面白くないではなく、良いか良くないかで判断をしていました。
天気の子は面白いとは言えないが良かった。君の名は。はそういったものが感じ取れなかったので好きにはなれなかった。
私が新海誠作品で一番好きなのは言の葉の庭なのですが、あれは長編アニメではない。しかし天気の子は120分ある長編アニメであるため、そういった俺たちは雰囲気でアニメを観ているパートが長過ぎる。君の名は。とは超対称的である。
そこを良いととれるか退屈ととるかで恐らくこのアニメの評価はガラッと変わると思います。ちなみに私はもう一回観たいけど、正直言うと本当に観たいと思う部分は半分ぐらいだと思います。
そんなことよりも天気の子で痛烈に感じ、且つ最高だなと思ったところがセカイに対する無力感と無敵感と壮大感。
ここからは対比無しに純粋に天気の子の感想を喋ります。ガッツリネタバレするので気を付けてください。オタクになります。
大きく考えると良かったなと思った点が二つ。
・大人と子供の対比が痛烈
これがもうどうしようもなくぶっ刺さった。
なにも出来ないけどなんでも出来る子供と、なんでも出来る癖になにも出来ない大人。
劇中では露骨に二人の対比が描かれています。しかも二人は似ているという設定まで付与されています。
というか描き方が露骨過ぎてこれはもう大人と子供というより現実と理想の対比。過去に囚われ今に縋り付こうとする大人と、今とか世界とかどうでも良くて、好きな子のことしか考えていない子供。もう泣ける。何が泣けるって、主人公に全くもって感情移入出来ない自分になんだよな…
・最強の映像美と最強の音楽+セカイ系
これでしょ、俺たちが天気の子を好きな理由は結局これじゃん。
世界を相手に何も顧みずに思春期の少年少女が戦うものが大好きなわけじゃん、そういうものに未だに憧れてしまうわけじゃん。だからきっと、天気の子が好きな人間はそういった作品に多く触れてきている大人になれない大人なんだと思います。
本当に良くない方向に世界は変わってしまったわけで、その事実を二人と少数の人間しか知らない所謂セカイ系でしたが、君の名は。とは決定的に違うところは一般的に見たら結末が全然明るくないというところでしょう。二人は無力だった。世界には勝てなかった。二人は世界を変えてしまったという事実を背負いながら雨のやまない地で生き続けるんだ…
この結末については、途中巫女の件で触れられた「観測史上なんてここ何年間の話だ」という話と、おじさんの最後の「うぬぼれるな。世界なんて最初から狂ってる」という台詞が強烈に効いていると思います。そう、世界は変わったんじゃなくて最初から狂ってる、うぬぼれるな、だからお前たちはお前たちの思うままにやれ。っていう須賀(大人)からの精一杯のエールなんですよあれ。後をどうにかするのは大人だ、だから君たちは気にするな、気にせず世界に挑め青年。
そう!世界なんてどうだっていいんだ!知ったことか!二人が主役だ道を開けろ!
未来や世界よりも自分の好きな子を選び世界を変え、結果環境的には最悪の状況になっているけど、それでも好きな子に会いに行き二人で笑って「大丈夫」ですよ。
もうどうしようもなく僕たちの大好きなボーイミーツガールでメリーバッドエンドのセカイ系じゃん。
そこにあの演出と音楽と空だよ。最高だろ。「あとはどうにかなるさと肩を組んだ 怖くないわけないでも止まんない」なんだよな…
これを否定されてしまっては私が見てきた触れてきたやってきた作品が否定されることになる。数々のエロゲー達であり、最終兵器彼女でありエウレカセブンでありエヴァ破じゃん。
ポッと出の少年が超能力を持つ女の子と出会い、次第に互いに自分を認めてもらえる相手の隣に居心地の良さを感じ居場所を見付けるようになり、最終的には世界と戦い、ハッピーエンドとは言えない結末だけど二人は笑い、「それでも世界は続いていく」やつじゃん…大好きに決まってんだろ…
こういった要素を踏まえて新海誠は賛否両論になると言ったのだと思います。
これはまさに書いてきた通り、ある特定の層には刺さりに刺さってしまうが、それ以外にはぼんやりとした映画で終わってしまうということなのかなと。
この特定の層ってのは所謂ゼロ年代のオタク(ゼロ年代の作品に多く触れてきたオタク)であるのでしょう。これはツイートや考察を見て気付いたことですが。もうTwitterでも散々言われていますね。
私はこの文を書くまでそういう意識は全く無かったんですが、この通り大絶賛している当りそういうところが自分にも少なからずあるのでしょう。自覚はまるで無かった。
たまたま同じ時間にこの映画を観た友人は京アニに募金した方が良かったと言っていましたがこれは仕方ない。だって歳がそこそこ違うから、おそらく触れてきた作品の傾向が違う。これは良いとか悪いとかではなく年齢とか世代とか好みの問題。
そろそろまとめようと思いますが、個人的には最高最強の大傑作でした。
ただ君の名は。の爆発的ヒットを考えると君の名は。の方が良かったと言う人が多くなるのかなぁ。前述した通り君の名は。ならではの良さというものは天気の子には余りなかったような気がするので。
あの作品の次に天気の子を創った新海誠とかいう男ロックンローラー過ぎるだろ。
僕は逆にダラダラとした展開の新海誠作品が好き+メリーバッドエンドが好き+最高峰の映像と音楽+セカイ系といった理由で天気の子は大好きです。超好き。本当にありがとう天気の子。
天気の子は話自体は非常に単純なボーイミーツガールで、そこに「映像美と音楽と独特の間延びした展開と結局何が言いたいの?どうなったの?という結末、等の絶妙な新海誠味・所謂ゼロ年代の作品味」が含まれていたと思っているので、君の名は。しか知らないという人も全部観てますという人もとりあえず観てみて欲しいし、逆に新海誠の作品は君の名は。すら観たことないという人にこそ観てもらいたい。
でも面白くないと言われても正直反論が出来ないのでオススメは余り出来ない。
でも観て欲しい。うーん難しい。
逆に君の名は。に熱中していた若い世代、青春真っ盛りの世代で天気の子がぶっ刺さった少年少女は私に密かに教えて下さい。やってほしいゲーム、見せたいアニメ、読んで欲しい本がたくさんあるんだ…
ちなみに天気の子のサブタイのWeathering With Youの解釈、僕はセカイ系脳なのであなたと乗り越える説を推しますが風化もそれはそれで最高なんだな。
0コメント